地球環境と共生できる循環型の社会を今の社会の現状私たちは文明の発達と共に大自然の力を軽視し、科学を万能であるかのように考え、我々人間の能力ですべての自然をコントロールできるかのような錯覚に落入ってしまいました。
そして、人間の都合ばかりが支配する社会へと変貌し、いつの間にか自然から背を向け、 あたかもそれが快適な暮らし、文明的な暮らしであるかのような生活を日々、送り続けております。
その結果、地球の生態系のバランスが壊れ、様々なひずみが出来てしまい、あちこちで災害が頻発するという状態を招いてしまったように思われます。
自然の循環地球の自然は、様々な生命体がそれぞれ絶妙なバランスで関わりあいながら、それぞれの命を育んでおります。私たち人間も地球の大きな自然環境の中に組み込まれている一生命体であり、他の生命体とのバランスを欠いては存在することが出来ない部分であることを自覚するときが来ております。
また、太陽やさまざまな星の光のエネルギーは、水や空気や大地、そしてすべての生き物たちの中をいろいろに形を変えながら、大きく循環しています。
大地に蒔いた種子は、土と水と空気と微生物、光に育てられ、葉を伸ばし、実を結びます。そして、人や虫や動物たちの食べ物となって命をつないでくれております。
動物たちの糞は発酵して堆肥となり、微生物に食べられて再び土に返っていきます。そして、その豊かな栄養分を含んだ水は山に保水されて川となり、その水を植物が吸収して大きく成長します。
また、植物の体内を通過した水は、葉から蒸散作用によって空中に出て、冷やされて雨になり、その雨は再び作物の命を育てます。地球のあらゆるものが循環しながら、生命を維持しているのです。
地球の危機現代社会においては それらの循環を私たち人間が断ち切って、それがあたかも文明社会の勝利であるかのように、便利で快適な暮らしを追求してきました。しかし、そうした行為が自分たちの首を絞めるような状態を作り出してしまっていることを自覚しないかぎり、この地球の危機的な状況を救えません。地球環境を本来の姿に戻し、今までの間違った知識をもう一度検証しなおそうではありませんか。
自然に沿っている農業でさえ、今は循環を維持できておりません。
例えば、化学肥料や農薬がないと作物は育てられないのでしょうか?
化学肥料を使うと土中のミネラルバランスを壊し、一度使えば、次からはその肥料なしにはうまく育たなくなるそうです。
農薬も土中の菌や微生物バランスを崩してしまいます。
害虫と名付けられた生き物さえも、生態系のバランスのために 必要だから存在するのだと言う人もおります。
生態系のシステムを崩してしまう行為が、人間が手を入れないと成立しない環境を作ってしまっている様な気がします。
山と畑の現状山についても同様です。
山に針葉樹ばかりを植林してしまったがために人間が管理しないと、山の植生が成り立って行かなくなっていると言われております。
いまや、その管理をする人間もいなくなり、日本のあちらこちらの山は荒れ放題です。
間伐が出来ないと、地面に光が届かず、真っ暗で、下草も生えません。そして、微生物や菌類の循環も途絶えて山が死に至ってしまいます。
今、田畑の作物がサルや、イノシシ、鹿、などの野生の動物に食い荒らされるという被害が全国的に相当深刻なものになっておりますが、山が瀕死状態になってしまい、食べ物がなくなったことがその一因として考えられます。
作物を豊かに育くむはずの水も、動物の糞や草木の養分を十分に田畑に届けられません。
また、過密になって根っこが張れない木々は少しの雨でも倒壊し、山は保水力をなくして山崩れを引き起こします。
野生の動物が人里に下りてくることも、作物のミネラル不足も、最近頻発している集中豪雨による山崩れや水害も、すべて、自然の循環を壊すという、人間が行ってきた行為の結果なのではないでしょうか。
人々の暮らし大阪を始め、都市部に住む人々はこうした現状にさほど意識を向けることもなく、大量生産、大量消費、大量廃棄のシステムの中に組み込まれて、自然から切り離された環境の中で暮らしている方が大半だと思います。
密集した住宅地やビルに囲まれて、空調された空間で過ごし、自然の風の心地良さを感じることも出来ません。
コンクリートの大蓄熱層に囲まれて熱い夏にまで過剰に太陽熱を取り込み、電気やガスなどのエネルギーを使って熱を排出しております。
風の流れを考え、直射日光を防ぐ構造や植物の蒸散作用を使えば、もっと低コストで 気持ちよく暮らすことが可能です。
自然が無償で与えてくれている太陽のエネルギー、風のエネルギー、水のエネルギー、植物、微生物などのエネルギーをうまく活用することもなく、地球の限られた化石燃料を使って、高いコストを掛けて生活を維持しています。
都市計画を自然との関係からもう一度見直して、建築をつくっていけば もっと人と自然が調和した 住みやすい環境が手に入れられるはずです。
しかし、今の状況はどんどん住みにくくなる方向に加速していっているようで、誠に残念です。
こうしたことは、衣食住すべてにおいて同じようなことが言えます。
一人一人が少し発想の転換をすることで、もう少し自然の力に目を向けた生活を営むことが出来ると思います。
もう一度、私たちの先代たちの暮らしを 見直してみても良いかもしれません。
江戸の暮らし江戸時代は太陽エネルギーを元に穀物を作り、燃料から資材に至るまでほとんどを植物に依存し循環している「植物国家」であったと言われております。
そして、糞尿からゴミに至るまで 様々な回収業者が都市と農漁村を繋ぎ、それぞれの ニーズに沿って廃棄物を有効利用するシステムが出来上がっていたようです。
また、古着、なべから茶碗に至るまで、修理する職業、リサイクルする職業 が存在し、物を最後の最後まで大切に使い続けたようです。
徹底したリサイクルができ、ゴミというものは存在しない江戸時代の日本の町。
17世紀のロンドンやパリと比べれば、はるかに清潔で快適でさえあったと江戸の研究者たちは言っています。
驚くことに、大阪の川の水も、普通に飲料水として使うほどきれいだったそうで、井戸水は雑用水にしか使わなかったようです。
つい、140年程前までの我々の先祖は、こうしたすぐれたリサイクル社会を築き、想像するよりはるかに豊かな暮らし送っていたようです。
今後に向けて今私たちのできること残念ながら、戦後、国の方針として政治経済が執ってきた方向は、人々が自然と共生しながら生きていく方向に反するように見受けられます。また、地方自治もその枠組みの中でしか動けなかったと思います。
しかし、これからは、自然と共生した循環型社会を考えることなくして、前には進めなくなってきたのではないでしょうか?
そのためには個人レベルからでも今出来ることから少しずつ変えていく必要があります。
一人一人が自然の大切さに気づき、意識を高めていくことが 今、最も大切なことだと思っています。
また、一方で、一人一人の住人の豊かな生活を視点に置いた大きなシステム作りも欠かせません。
行政が環境対策の一環として地球環境・循環サイクルを考慮した生活への提言、システム再生の取り組みを支援し、その方向に流れを作る枠組み作り、啓蒙活動、助成、などをしていただければ、人々の中にどんどん広がり、加速していくのではないかと考えております。
地球環境・循環サイクルを考慮した生活、取り組みへの提案例■ まず、身の回りからの小さな循環に目を向けて見ましょう。
生ゴミは微生物たちが土に返してくれます。
そのための家庭用の小さなコンポストもあります。
土があり、植物を育てる環境があればゴミから植物への循環になります。
マンションのベランダでもプランターやペットボトルを使っての野菜作りができ、
植物の成長を眺めながら暮らすことで、より自然の持つ大きな力に気づきます。
■ 雨水を出来る限り土に返しましょう。
道路や河川、広場などはアスファルトやコンクリートでなく透水性のある素材で大地を覆いたいものです。
また、屋根の水も側溝やマンホールへと流すのではなく、タンクにためてトイレの水や庭の水遣りなどに利用すると有効です。
土に滲み込んだ雨水は豊かな地下水になって海の水もきれいになります。
植物も元気になります。
■ 日常空間の中に自然の力をもっと取り入れましょう。
風の流れをもっと意識的に取り入れ、緑を増やした街づくりが望まれます。
エアコンや空気清浄機を補完する風の効果、樹木の蒸散効果や日陰効果、そして癒しの効果、また、太陽光のコントロールによる暖房効果、建物の形による日射コントロール、建物の材質による蓄熱、熱貫流のコントロールなど挙げればきりがありません。
また、大阪の川に対する再考も現在進行形ですが、かつての水の都のイメージ復活や美しい水と触れ合いの場づくりはもっと必要なのではないでしょうか。
自然の力を積極的に利用した快適な街づくりは、地球環境にも優しいものとなるだけでなく、人々の生活に潤いをもたらすことでしょう。
■ 自然の循環を取り戻すために農業の活性化を図りましょう。
地産地消や、自然農法への取り組みは、輸送の省エネルギー化だけでなく、人々の健康のためにも効果があります。
また、学校給食の見直しは色々な波及効果が期待できます。
本当の食育とは何かを考え、米を中心とする献立への見直しも含め、できる限り無農薬の近場の農家がそだてた食材の調達が望まれます。
■ 日本の林業が成り立っていけるよう、支援することで山を守りましょう。
国産材を使った家づくりや 間伐材の利用促進を推奨し、国産材の需要をつくるために今の経済、住宅産業のシステム再考も視野に入れて、取り組む問題であるかもしれません。
■ 将来に向け、地球環境と共生するという視野から、下水施設のあり方の再考をし、
微生物の力を借りて、汚水や雑排水も土に返す努力をしましょう。
そして、その土から作物が育つような循環システムをつくりましょう。
■ 将来に向けた、都市全体の配置計画をはじめ、都市構造を練り直し、
自然の恩恵をもっと受けやすい街づくりに向けての方向を示していきましょう。
そして、本当に人々が心豊かに気持ちよく暮らせる町をつくっていきましょう。
以上、私の個人的な思いをあくまで一例として列記いたしました。
地球環境と共生できる循環型の社会をつくるために、今までの金融資本主義、経済至上主義を基盤としたシステムの延長線上での環境対策や修正を考えるのではなく、未来社会に向けた大きなビジョンのもと、新しい座標軸を作り、未来の都市像を描きながら各分野の専門知識を結集して環境対策を立てていただければありがたいと思っております。